ゲンちゃん(仮名)の人生

なおたろ

2009年05月31日 12:17

やんばるのとある山
(ま、山といっても沖縄なので
たいした標高じゃないけれども)で
暮らしているゲンちゃん(仮名)。

ひと言でいえば数も数えられない、そんな人。

世が世なら、環境が環境ならひょっとしたら、
某大将のように美術かなにかで名を残す
チャンスがあったかもしれないけれども、
ゲンちゃん(仮名)はその日暮らしの土木請負人。

彼の日課は、
たいがいの人なら車で移動するような
山道をひたすら歩くこと。

日に数十キロは歩いているはずだと皆はいう。

たまたますれ違った人から声をかけられ、
山や畑で重たい物を運ぶ仕事を
手伝って収入を得ているそうだ。

携帯なんて持っていないから
連絡は取れないけれども、
歩いている彼を見つければ済むという。

ちなみにゲンちゃん(仮名)は
もうとっくに天命を知っていてもおかしくはない歳。
ずーっとそういう風に暮らしてきたらしい。

「昔は煙草1本でよく働いてくれたよ。
最近はどうやら煙草を止めたらしいけど、
大好きな缶コーヒーを飲ませて
お昼に弁当を食べさせれば
1日中働いてくれるよ」
と皆は笑う。

現においらもそういう現場を見てしまった。
あ、そのときは野口英世さんを1枚もらっていたけど。

もしも本当にいるのであれば神様は、
ゲンちゃん(仮名)に力を与えたのかしらん。
いやいや彼が自ら培ったのだろうとおいらは思う。

疲れを知らず、
「ここにある物をあっちへ運べ」と言われたら
文句を言うことなく休むこともせず、
運ぶ物がなくなるまで運び続けるパワーがある。
それはもう驚異的。

なんか切なくなってくるけど
それはそれで彼の生活が成り立っているのだから
他人のおいらには口出しできない。

きっとたまには売り物にならないような、
でも穫れたての美味しい食べ物なんかも
もらっているんだろう。
野口英世さんの代わりに。

アンチエイジングてなんなのさ、
と少年のような笑顔で
ゲンちゃん(仮名)は今日も山を歩くのだ。


映画や小説にでもなりそうな、
軽いカルチャーショックを覚えた
本当の話でした。

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